神奈川県の本厚木に髪型をリーゼントにしてくれるお店がある、という噂を聞いた。そこが美容院や理髪店ならばそれは当たり前の話だが、そうではない。そのお店は居酒屋なのだ。居酒屋でリーゼント? どういう事なのか、現地に行って確かめて来た。
(text by 住 正徳)
噂は本当なのか?
そのお店は小田急線本厚木駅から徒歩で7、8分、商店街の一角にあった。訪れたのは夜10時過ぎ。周囲の商店はどこも閉まっていたので、そこだけがやけに明るく異空間のようだった。お店の名前は「ラグタイムカフェ・GINA」というらしい。
「リーゼント」というキーワードが何となくしっくりくる店構えではある。ロックンロールの香りがプンプン匂う。しかし、ここは美容院ではない。居酒屋である。ここで本当にリーゼントが作られるというのか?
しばらく様子を伺う事にした。
すると一人の青年がやって来た。お店に入ろうとしている。
待ち合わせだろうか。それとも店内に仲間を待たせているのだろうか。 いずれにしてもこれからお酒を飲む事は明らかである。何故ならここは居酒屋だから。
噂通りならば、この青年がこの店を出る時、髪型がリーゼントに変わっているはずである。
どうなんだ?
青年が出てくるのを待つ事にしよう。
寒空の下、先ほどの青年を待つが中々出てこない。
そりゃそうだ。何度もしつこくて申し訳ないが、ここは居酒屋なのだ。僕だったら少なくとも2時間は帰らない。このまま青年を待って終電を逃してしまうのだろうか。本厚木から自宅までの最終電車は何時だろう? 携帯電話で終電を検索したり、ミクシィを見たりしていたら酔っぱらったオジサンにからまれた。
「俺はこれから歩いて家に帰る」と言ってきかない。オジサンの家がここからどれくらい遠いのか分からないが、あれだけ威張るという事はシラフなら歩いて帰れないくらいの距離なのだろう。
オジサンも大変だ。
と、その時! お客が出て来た。
リーゼントスタイルの男性である。 さっきの青年だろうか?
間違いない。さっきの青年だ。
噂は本当だったのだ。 お酒が飲めて食事が楽しめて、さらにリーゼントにもしてくる居酒屋は本当にあった。
というのは演出でした
と、少しわざとらしい演出で「リーゼントにしてくる居酒屋」を紹介してみたが、本当は、リーゼントのbefore・afterをお店のスタッフに演じていただいたのだ。でも、これはねつ造ではない。このお店がリーゼントを作ってくれるのは本当である。
ではなぜ、居酒屋でリーゼントなのか?