3月21日から一週間。私は、友人、チェコ総合情報雑誌「UKR(ツックル)」編集長・梶原さんと、某出版社勤務の編集者・ニシさんと一緒に、「女3人・ぶらりチェコの旅」というのを、決行してしまったのだ。
海外旅行は、約3年前に、クジで航空券が当たって行った、ベトナム以来だ。
ベトナムになんて、本当は行くつもりじゃなかった。「次、海外だったら中国かタイに行きたいな〜」と漠然と思っていたのに、なぜかハノイとホーチミンを一人旅した。それは結果的に、人生の視点を変えるような、強烈な旅になった。
チェコに関しては、「ツックル」に寄稿していることもあり、「一度は行かなきゃいけないな」という興味はあったせよ、あまりに遠すぎて(そして渡航費も高すぎて)、「行こう!」という踏ん切りがつかなかった。正直に言えば「行きたい国ナンバーワン」ではなかった。
それは、今年2月10日、私の誕生日にさかのぼる。
人生でいちばん楽しい誕生日になる予定だった。
なぜか、そうはならなかった。
私はドーン、ドカーン、ドンガラガッシャーン! と、落ち込んでいたので、ニシさんが「じゃあ一緒に飲もう」と誘ってくれて、新宿で中華をおごってくれた。
2件目の立ち飲みフレンチ屋で、「ホロホロ鳥のなんとか煮込み」をつまみながら、3杯目のグラスワインを飲んでいるときだった。
「……大塚サン! 傷心には、旅行でしょう!!」
「旅行…かなあ」
「私、会社の年度末に、まとまって休みがとれるから、一緒にどこか行きましょうよ! 一週間くらい!」
「ああ、いいねえ、旅……いいかもね」
「どこ行きたいですか?」
「うーん、上海か大連かバンコクあたりかな…」
「……いや、アジアなんか3泊くらいで行けちゃうじゃないですか。もっと遠く、遠く。……そうだ、チェコ行きましょうよ、チェコ!」
「え!?」
「いま、梶原さんに電話するー!」
酔っぱらいが、携帯電話を取り出した。
梶原さんは、私とニシさんの、共通の友人だ。友だち……なんだけど、実は梶原さんは、「こないだ、来日したチェコ大統領と謁見したよー」というレベルの、チェコ的VIPだったりする。もちろんチェコ語が喋れる。
「…梶原さん、その時期なら動けるので、チェコを見て欲しいから同行しますよ、って言ってますよ!!」
「まじで!?……そ、それって、通訳兼ガイド同行の旅、ってことになりますよね、ぜいたく……」
「こんな旅行、今、このタイミングでしか出来ませんよ!?」
「そうかもなあ。みんな忙しいし。そうだろうなあ。そりゃそうかもしれないけど……でも、今、お金、あんまりないんだよ、いろいろあって…本当にいろいろあって…」
「じゃあ、飛行機代オゴーる!!」
「そういうワケにはいかないでしょ!」
「とにかく決定! やったー! わーい楽しみ!!!!!!」
なんだか分からないうちに、チェコ行きは決まっていた。
いつも、何かに巻き込まれがちな体質だ。
今回もそうだ。でも別に嫌な予感はしなかったので、「こりゃ、ご縁があるんだな」と思うことにした。
日本からチェコへの直行便はない。そもそも3月の飛行機は、「卒業旅行」と「年度末旅行」の人々で、空席が少ない。
大韓航空は安かったが、日程的に合わなかったので、欧州系航空会社の最安値を探した。
ニシさんが「エアロフロート(ロシア航空、大雑把な運転とサービスで有名)だけは、安くてもヤダー!」というので、ブリティッシュ・エアウェイズで、ロンドンのりかえ、プラハ行きの便を予約した。11万円也。飛行機代はニシさんに立て替えてもらって、確定申告の還付金が帰ってくるときに、返すことにした。「還付金一括払い」と、個人的に名付けた(還付金は、自営業者にとって、一種ボーナスのような感覚だったりする、税金返してもらってるだけなのに!)。
成田で「最後の和食(?)」として、担々麺を食べながら、搭乗時間を待つ。 |