●かわいくなさという光明を求めて
かなり難しいことがわかった今回のミッションだが、それでもかわいくない動物を探す旅は続けなければならない。気持ち揺れながら歩き回る中、これはどうだという動物を見つけた。
アメリカバイソンである。このたたずまいはどうだろう。
私「これはかわいくないだろう?」 妻「うーん……」
すっかり動物かわいいモードに入っていた妻に問いかけてみると、さすがに少々迷っているようだ。よし、これはもうひと押しだろう。
「タダオって言うらしいよ」 「そうねえ…」 「腹からブーブー鳴くんだってさ」 「えー、そうなのー、かわいい〜」
まずい、そういうリアクションになるのか。かわいくなさをアピールするために言ったことが逆効果になってしまっている。さらには「よくよく見ると、やっぱりかわいいじゃない」とも言い出した。
うーん、そう言えばこのボーッとした感じ、結構かわい…。
違う違う、そうじゃない。何を負けそうになっているんだ。そう思いつつも、じっくり見てわかったアメリカバイソンのかわいさに抗いがたいのも事実。うう、と思いながら立ち去る。
続いてやってきたのは、ワピチという大型のシカ。なぜだか木の陰や隙間にずっと顔を入れたままなのだ。しばらく見ていても、そのままほとんど動かない。
「これはやる気ないね、かわいくないだろう」 「何言ってんの、これはもう明らかにかわいいじゃない」
えー、ここでもそうなるのか。まあ確かに、動物園にいる動物らしからぬ様子が、恥ずかしがっているようでもありかわいいではないか。
…うわ、うっかり「かわいいではないか」と書いてしまった。どうした自分、そうじゃないだろう。
続いてはサイ。これはいわゆる「かわいい」といった動物とは違うと思うのだが…。
「サイはかわいいって感じの動物じゃないよね」 「見て見て、あのおしり、かわいい〜」
パーツで攻めてくる妻。なるほどなるほど、そうか、そういう見方もあるのか…。
……だから違うだろう、ここは納得するところじゃないだろう。形勢はどうも不利なままなのだが、他の動物でなんとか一発逆転を狙いたい。