吉方位の先には桜エビがいた 海岸線沿いの国道1号線をしばらく行くと、由比漁港という港に着いた。
エビのモニュメントがどーんっとあって、漁船も沢山停泊している。 ここなら海の幸がありそうだ。 方位術はただ吉方位に行くだけでなく、その土地の食べ物を食べたり、水を飲んだりしないといけない。
東京から約150キロ離れたこの場所を今回の吉方位終着点とする事にして、近くに宿を探した。
海辺に近いせいもあり、風はかなり強い。
由比町には旅館らしき旅館が3軒だけしかなく、この割烹旅館西山だけが空いていた。
夜8時をまわっていたので夕食の準備は難しいと言われたが、粘ってお願いしたら出してくれた。厨房の男性が面倒臭そうにしていたが、すみません。こっちは開運がかかっている。
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早速通された大食堂には他に客の姿はなく、静かだった。 仲居さんが次々と料理を運んでくる。
「どうぞ、桜エビづくしです」
由比町の特産品は桜エビらしく、あらゆる調理法で桜エビが登場する。あまりの桜エビ押しに圧倒されたが、「吉方位の土地のものを食べる」という僕の目的にはピッタリだったので全部食べた。多分300匹くらい。
「その土地の水、飲料を飲む事もいいですね。そうそう、アルコールでもいいです」 そんな細田さん言葉を思い出し、ワインを飲む事にした。
由比町のワインではなかったけど、細かい事は気にせずに飲んだ。
台風は更に近づき、雨も強い。
窓がガタガタと震えている音を聞きながらテレビを見ていた。 10時半頃、「暴風警報解除」と速報が流れたが、その後も窓はずっと震えていた。
気付くとワインを1本空けていて、もう1本頼もうかと思ったけど旅館の人たちはみんな寝ているようだったのでやめておいた。