持ち合わせがないのに中華屋さんでラーメンを食べてしまい、じゃあ仕方ない皿を洗ってもらおうか、とお店の人から言われる。そんなシチュエーションをドラマやマンガで良く見かける。実際にラーメンを食べた後に、「すみません、お金がないのでお皿を洗わせてください」と頼んでみたらどうなるのか?
やってみました。
(text by 住正徳)
人情味溢れる中華屋さんを探そう
皿洗いでラーメン代を支払う事に成功するためには、人情味溢れる中華料理屋さんと巡り会わないといけない。 そうかお前お金がないのか、だったらアレだ、皿洗っていけ。みたいに口は悪いけど気は優しいご主人がいるお店。
そこで、世田谷区の三軒茶屋にやって来た。渋谷まで2駅というロケーションながら古い商店街も残っているこの場所なら、そんなお店が見つかりそうな気がする。
と思ってはみたものの、人情味が溢れてるかどうかなんてパッと見で分るはずもない。 だったらパートを募集しているお店はどうだろう。人手に困っているお店ならラーメン一杯と皿洗いを交換してくそうだ。
で、早速パートを募集しているお店を見つけた。「中華料理 S」。 お店名をイニシャルにしているところを見ると、うまくいかなかった様に感じるかもしれませんが……
とにかく働いている人たちがご年輩なのだ。 ホールで給仕をしているおばさん2人は大きな声でお孫さんの話をしているし、厨房で働いている人もみんなお年寄り。
あまり洒落が通じない雰囲気がむんむんと漂う中、600円のタンメンを注文した。表の貼紙には時給900円と出ていたので、1時間働かさせてもらえば逆にお釣がくる計算だ。
右のおばさんのお孫さんは「お目目がくりくりで、そりゃあもうかわいい」らしく、左のおばさんは「お正月は目医者さんは休みなのか」どうかを気にしている。
お昼時だったのでお客さんの回転は早く、テレビからはみのもんたの声が聞こえてくる。
10分ほどでタンメンを食べ終わり、そういえば味はどうだったのか思い出せない自分に気付く。お店に入ってからずっと、タンメンを味わうのを忘れるほど緊張していたのだ。
出かける前は、いっそ財布を持たないで挑戦してみようかとも思った。その方がお願いの仕方に迫力が出るのではと考えたのだが、さすがにそれはやめておいた。 支払いの時が近づくにつれ、やめて賢明だったと思えてくる。
食べ終わっているのにいつまでも座っている訳にもいかず、いよいよ交渉に向かわなくては。
「お金を払う代わりにお皿を洗わせて下さい」 ちゃんと言えるだろうか。
「あのー、お金を払う代りに……」