「これ、食べたら危険かなぁ?」
食べ切れずに冷蔵庫に入れたまま、数日経った刺身を前に悩んだ経験はないだろうか。
そんなときは迷わず焼く。ジュージュー焼く。刺身を焼くという行為は、どことなく魚を冒涜しているような気分がするが、そこがまたいい。ジュー。
そこで、せっかく「ナマ」で食べられるのに…、という物ばかりを集め、とにかくジューッと焼いてみることにした。冒涜気分を味わいたいのではない。あくまで、味の変化が見たいのだ。
(高瀬 克子)
焼く=安心
「火を通せば安心」という意識は、夏に「O157」が騒がれ出して以来、さらに強くなったように思う。
ちなみにO157の菌は、75℃で1分以上加熱すると死滅するらしいが、今回は殺菌したくて物を焼くワケではない。ただ純粋に、味の変化を感じたいという魂胆だ。
というわけで、焼いた味が想像できてしまう物は選択から外すことにした。目指すは、意外な味との出会いである。
となると、うーん、何を焼けばいいんだ?
焼いた結果がウマイのかマズイのか、それすらも想像できない物を苦心しながら数点買い込み、さっそく焼いてみることにした。
まずは納豆から
納豆汁や納豆チャーハンなど、納豆に火を通して食べる機会は多いが、そういえば「ただ焼いただけ」の納豆を食べたことがなかった。試してみる価値は大いにある。
とにかく匂いが強烈だ。納豆嫌いなら10メートル先からでも察知して、逃げ出したくなるに違いないほど強烈だ。
納豆好きにかけては人後に落ちない自負のある私ですら「えっ?」と少々ビビるほどであったが、物は試しとさっそく口に入れてみる。
いやこれがもう。匂いからは想像できないほど、味がまろやかで非常に美味だった。まろやかでありながら力強いというか。…どっちだ。
しいて言えば「納豆の滋味だけが残ったような」と言うべきか、そんな感動的なものが出来上がった。これは納豆好きには、是非試してもらいたいほどのウマさだ。ああ、これにネギやらゴマやらを混ぜて焼いたら、なんぼかウマイものが出来上がるだろうか。夢が膨らむ。
予想外のウマさにすっかり気を良くして、他の物もどんどん焼いていくことにしよう。もう止まりませんよ。