先日、部屋を掃除していたら、いつも以上に猫の抜け毛が多いことに気がついた。
「あー、換毛期だもんなぁ…。そろそろ夏かぁ」
そう、今の時期、猫は冬毛がバンバン抜ける。抱くと服が毛まみれになり、スリ寄られた膝のあたりも毛だらけだ。
この毛を何かに有効利用出来ないだろうか…、と考えていて、ハッとひらめいた。そうだ、筆だ。筆を作ろう。それで絵を描こう
(高瀬 克子)
主役登場
猫を飼っているワケではないのだが、毎日のように部屋に猫が来る。今日もやっぱり来た。
これが寒い時期なら、猫を膝に乗せて暖を取るのは楽しいし、嬉しい。しかし、季節は梅雨まっさかり。「抱いてくれ」と言われても、うっとおしさが先に立つ。あーもう、寄るな寄るな。
すり寄ってくる猫を適当にあしらい、舞い散る毛に顔をしかめながら、ゴムの「毛取り」(なぜかイギリス製)で丁寧にブラッシングしていくと、面白いように毛が取れる。
こうすることで毛が部屋に散乱する量を、ある程度調節することが可能なわけだ。背中のあたりの抜け毛が特にひどいので、その周辺を重点的にこすりまくる。猫も、されるがまま状態。
たまに猫が「…んなぁ」と妙な鳴き声を出す。嫌がっているのか気持ち良がっているのかイマイチ定かでないが、ここは構わずゴスゴスと毛を取りまくろう。
さて、集めたこの毛で筆を作ろうと思ったのはいいが、筆ってどうやって作るんだ?
インターネットで筆作りについて知ろうと思っても、検索で引っかかるのは「胎毛筆」に関する情報が多い。(胎毛筆とは、生まれてから一度もハサミを入れていない赤ちゃんの髪の毛で作る筆のことらしいです)
…なるほど。でも毛の柔らかさでいえば、猫の毛は赤ちゃんの毛に勝るとも劣らない。ものすごく細い、フワフワした毛の塊を前に「これはうまくいくかも」と、一人ほくそ笑んだ。