新幹線から看板が見える。727化粧品、ふとん。当サイトでも大山さんがその数を数えていた野立て看板だ。(「東海道・野立て看板鑑賞」)
あの看板は新幹線が通らないときも線路に向かって立っているわけで、切ないというか、ばかみたいだ。
しかしあっちから新幹線はどうみえるのか。裏側はどうなっているのか、そもそもどれぐらいの大きさなのか。 近くにはどんな町があるのか。妙にそそられる。
四国取材の帰り、新幹線を途中下車して見に行くことにした。(林 雄司)
なんでもわかるインターネット
当てずっぽうに看板を探すのは危険だ。新幹線から見つけて次の駅で降りて探すとしても 下手すると10キロ以上歩くことになる。新幹線の駅と駅とのあいだは遠いのだ。
あらかじめグーグルマップを見ていたら、岡山からほど近い新幹線沿いに看板らしき影が映っているのを発見した。
画面下から光が差しているので、新幹線の高架も家も影が上に延びている。畑のなかにあらわれる四角い影。上から見て建物らしき厚みがないので板状のものであることがわかる。看板だ。
ここに行けば畑のなかにソリッドに立つ看板があるのだ。岡山で新幹線に乗り換えるときにここに寄ろう。こんなことでわくわくしてるのがちょっと恥ずかしい。
野立て看板のこっちと向こう
翌日、看板に近い東岡山駅で降りて看板方面に歩く。30分ぐらい歩けば看板があるはずだ。地図サイトで調べておいた。
グーグルマップで見たところだ
大学で同じクラスだったMくんは岩手で新聞配達のバイトをしていた。新幹線の高架沿いが担当地域だったので、いつも配達のバイクで新幹線高架をくぐっていたそうだ。新幹線の車窓から新聞配達のひとを見たことがあるが、あれがMくんだったのかもしれない (たぶん違う)。
Mくんは朝刊の配達をしてから寝るような生活をしていたと話していた。新聞少年のイメージとは逆の不健康な生活である。
新幹線から一瞬だけ見えた人たちもいろんな事情を抱えて暮らしているのだ。
意外なものを作っている工場
Mくんはバイト先の社員旅行にも行った。 温泉で先輩が芸者さんを呼んだら全員外国人だったそうだ。外国人の芸者さんに行きたいところはあるか聞いたら「東京」と言っていたとのこと。成田からいきなり東北の温泉地にきたから東京に行ってみたいという。
新幹線で通り過ぎていた場所にもそんな不思議な話があるなんて。
僕とそこのあいだに立つのが野立て看板だ。
シュワシュワ ゴワゴワと通り過ぎる新幹線
ところで看板はどうなった
なぜ思い出話ばかり書いているかというと、見あたらないのだ。看板が。ないんだよね。撤去されたみたい。
看板にまつわる妄想だけが接点だったのに、看板がないとなんの縁もない場所である。なんでここを歩いているのかさっぱりわからない。
僕のこの3時間は無駄だ。そしてこのページの情報量はゼロだ。読んでる皆さんにはたいへん申し訳ない。やっぱりインターネットじゃ看板の位置はわかんないよ。
かえりのバスで
帰りは市街地までバスに乗った。岡山のバスは整理券の6と9が漢数字だった。混同しないようにだろう。看板はなかったけどこんなコネタを仕入れられてよかった。
いや、よくない。ごまかそうとしたけどだめだった。予定を変更してあした再チャレンジする。